水たきってなあに? 〜日本の食文化が生んだ極上の鍋〜
冬になると食べたくなる鍋料理。寄せ鍋、すき焼き、しゃぶしゃぶ…と、全国各地にさまざまな鍋がありますが、その中でも全国的な知名度はまだこれからという鍋料理が「水炊き」です。
名前の通り、「水で炊く」ことからそう呼ばれます。

水炊きの基本はとてもシンプル
一般的な鍋は、出汁を用意してから具材を入れて煮込みます。
例えば寄せ鍋なら「昆布だし+具材」、すき焼きなら「割り下+肉」。
出汁の旨味と具材の旨味が混ざり合い、複雑な味わいが生まれます。
一方、水炊きはもっとストレート。
「水+具材」――ただそれだけ。
最初から出汁を入れず、水でじっくり煮込むことで、具材(主に鶏肉)の旨味がそのままスープに溶け込み、ダイレクトに味わえます。
具材が鶏肉であれば「水炊き」、魚であれば「ちり鍋」と呼ばれるのも特徴です。
玄海では「水炊き」をその屋号から「水たき」という表記で表現しています。

水炊きのルーツをたどる
水たきの歴史には諸説ありますが、その源流は安土桃山時代の南蛮貿易までさかのぼります。
この時期、鶏料理が日本に伝わり、1642年の『料理物語』には南蛮料理として鶏料理が紹介され、長崎の名物として定着しました。
明治時代、肉食解禁とともに福岡に水たきが伝わり、地元で研究が進みます。鶏をじっくり時間をかけて煮込み、白濁したスープを抽出するスタイルが生まれ、これが「博多水炊き」として全国に知られるようになりました。
玄海が追い求めた“真っ白”のその先
水たき 玄海が目指したのは、ただの白濁ではなく、雪のように真っ白で、濃く深く、クリーミーなスープ。
その礎を築いたのは二代目・矢野雄一。全国の鶏を探し歩き、水たきに最もふさわしい鶏として福島県産「伊達鶏」に出会いました。さらに熱効率を考えた特別な設備を導入し、乳化を促進。理想の真っ白スープがついに完成しました。


その一歩前、創業者・矢野廣雄が確立した「鶏の臭みを感じない唯一無二の製法」こそ、玄海の水たきの魂ですが――それはまた、別の機会にじっくりお話ししましょう。
水炊きの魅力
水炊きは、見た目の華やかさや派手な味付けよりも、素材そのものの旨味を引き出す料理です。
透明なスープから始まり、時代とともに白濁し、バリエーションも豊かに、深みも増してきました。
食べ終わる頃には、最初から最後まで鶏の旨味を余すことなく楽しめる――そんな奥深さがあります。
まさに骨の髄まで、余すと来なく使用するこの食文化は、命ある食財(食材)を敬愛する、これからの時代に必要な文化ではないでしょうか。
まだ全国的な知名度は発展途上ですが、一度味わえば、そのシンプルかつ贅沢な美味しさに心をつかまれるはずです。

